※学生の頃、作成した小説です。素人ですが、楽しんでいただけたら、幸いです。
作品紹介
島に里帰りする女優・美由紀。彼女は、祖母を探す青年・亮と行動を共にする。そんな中、彼女を追いかけてやってきた記者・獅子川も同行することになり…懐かしくて、ちょっぴり切なくなる、そんな物語です。
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「随分と汚くなったわね、この街も…」
宿のテラスから見える街は、出ていく前よりも建物でゴミゴミとして、都会での悲しみを忘れる為に帰郷した、木之元美由紀(30)は、なんだか寂しく思えた。
(このまま、後三日滞在するつもりだけど、面影をなくした街のどこに行こうかな…)
行く宛てのない美由紀は、今日も朝から墓参りに出かけた。これまで忙しくて、島に帰れなかった為に、出来なかった分を補うかのように。
両親は、幼い美由紀の目の前で、交通事故に巻き込まれ死んでしまった。後部座席にいた美由紀は助かったが、その恐怖から、運転することは勿論、乗用車に乗ることさえも、出来ないでいる。その後、親代わりに世話をしてくれた祖父母も、彼女の初主演作を観て、まもなく亡くなった。
今の彼女は、一人ぼっちなのだ。墓地から立ち去ろうとする美由紀に、長身の青年が声をかけてきた。
ナンパかと思ったが、人探しをしていると写真を見せて来た。写真には、若く可愛らしい女性が写っていた。それが50年も前のものであることは、考えなくとも分かる。裏面には、鯨本佐智と名前が書かれている。彼はジョージ・亮(21)と名乗った。
「事情があって、母と祖母は引き離されました。死んでいたとしてもいい、今どうしているのか、そのことを知りたいのだと、母は話していました。」
彼はクォーターで、祖母がこの島の出身なのだそう。祖母にもう一度会いたいという、病床の母の頼みで、この島にやって来た彼だが、とても難航している。ここに墓があるのでは、と思い来てみたが、彼は字が読めなかった。
字が読めない彼の代わりに、墓を見て回る美由紀。
「それらしい、名前は無いわね…」
「ここに名前がないなら、どこか他所で…」
母と祖母の為、奮闘する彼に胸を打たれた美由紀は、協力することを約束した。両親との思い出がなかった彼女は、こういった家族の問題に関心が強かった。
「私はこの島の出身だから、土地勘があるし。それに…丁度暇だったから」
美由紀の言葉に、亮は感激し何度も、お礼を述べた。
住宅地に向かい、聞き込みを行う二人、この島の家も、随分と減ったものだ。しかし、祖母の写真が若い頃のものであること、亮が旧姓を知らないこと、同年代の人間が数少ないことから、祖母探しは困難を極めていた。少し休憩しようということになり、二人はベンチに腰掛けた。そして、亮は不思議そうに話した。
「美由紀さん、私はあなたに、昔会った気がします。」
「本当に?でも、私はアメリカに行ったことはないけど…」
「確かに、もっと気の強い人だったような、そんな気がします。」
休憩を終えた二人は、また聞き込みを始めた。だが、手掛かりは得られなかった。
…続く