あらすじ
亮の祖母を探す二人。しかし、一向に手掛かりは掴めない。そんな中、昔よく行っていたという「海の家」の主人の息子に、会うことが出来た。だが、美由紀の言動を、亮は不可解に思うのであった。
3
二人は、無意識に浜辺まで来ていた。美由紀の足は、意図せず海の家に向かっていた。
昔よく通っていたそこは、空き家になっていた。店の名前をスマホで検索した亮。
「近くにお店が出来ていますよ、お子さんがやっているみたいです。」
もしかしたら、知っている人に会えるかもしれない、二人はその店に向かった。
お店は、小さな喫茶店のような造りで、どこか懐かしい雰囲気が出ていた。
『ぴょん吉さん、お便りありがとうございました。私も犬を飼っていた時期があったので、お気持ち分かります。…』
店内に、正午のラジオ番組の音声が流れている。丁度、ランチタイムだ。注文を済ませ、席に座った二人は、軽く世間話をした。
亮は家族とアメリカで暮らしている話、文化の違いを教えてくれた。それにしては日本語が上手だと思ったが、祖母の影響が大きいのかもしれない。
話していると海鮮焼きそばが運ばれてきた。磯のかおりと出汁の風味が、五感に伝わる。昔と変わらない優しい味だった。食事を終えた二人は、勘定を済ませ、店員に写真を見せた。すると、店員は厨房の店主に声をかけた。
「ほら、こういうことはさ、アンタの方が詳しいと思ってさ…」
「いやいや、でも…」
引っ張られて出て来た店主、親し気なやり取りを見ると、二人は夫婦なのかもしれない。
「…君、ミユキちゃんじゃないかい?ほら!よく、店におじいちゃんと来てくれてた!!」
店主は美由紀のことをよく覚えていた。両親が彼女を応援していたこと、美由紀を見習えと、よく言われたことを話してくれた。だが、彼女は相槌を打つだけで会話になってなく、とても思い出話をしているようには思えなかった。彼女は、この店の常連だった…はずなのにだ。
「この島さ、全然電波が届かないでしょ、ミユキちゃんのドラマも、一年も遅れて放送されてんの」
ドラマの話になり、美由紀は俯いてしまった。そのドラマはきっと「向こうにいる君」のことだ。そのドラマをきっかけに、私は彼と出会い、恋に敗れてしまった。
「ちょっとアンタ、いつまで話してんの!ごめんなさい、この人空気読めなくて」
都会もんはせっかちで困る、と店主は厨房に戻って行った。状況が分からない亮に、美由紀は気にしないで、ということしか出来なかった。結局、この店でも情報は得られなかった。
続く…