あらすじ
高校三年生で、もうすぐ卒業を控える・鈍井則平は、部活の後輩である一年生・瀬勝良子に告白を受ける。彼氏彼女となった二人だったが、離れ離れになる時が来た。
一月下旬
今回も失敗か、とフラれてしまった鈍井則平は、ため息をついた。
「先輩〜、またフラれたんですかぁ?」
後ろから、部活の後輩・瀬勝良子が声を掛けて来た。
「違う、先によその男の、魔の手がかかっていたのだ!」
「フラれたんですね」
「うむ…そんなことよりも、部活動の方はどうなんだ。部長の俺がぁ…」
瀬勝は、モジモジと恥ずかしそうに呟いた。
「…先輩、私じゃダメですか?」
「部長になりたいのか?今のお前に、俺の代わりは務まらん。焦ることはない、ゆっくり経験を積んでから…」
「じゃなくて!彼女に、してくれませんか?」
鈍井は、ため息をつき、ズカズカと歩いていく。
「同情ならば、よせ!俺は、そういうのが一番嫌いだ」
「同情なんかじゃ…」
「同情心に縋るほど、落ちぶれては、居らぬわ!!」
このままでは、永遠に機会を逃してしまう。そう考えた瀬勝は、叫んだ。
「先輩のことが、好きなんです!!」
ズカズカッズカズカズカ。突如、鼻息を鳴らして、迫りくる鈍井。
「ならば、俺のどこが好きだ?言ってみよ!!」
「え、えっと…」
(顔が近いなぁ…それだ!)
「顔…とか?」
「フッ、時間を無駄にした。」
踵を返す鈍井。この男は、めんどくさいタイプなのだ。も~じれったな!と瀬勝は、彼に飛びつき、頬にキスをした。
「好きでもない人に、こんなこと出来ないでしょ!」
驚いた鈍井は、頬をさすりながら、考えた。
(ここのニキビは、潰せないな…)
「よかろう。お前を俺の、最初の彼女にしてやる。」
「やたぁ。でも、するなら最初で最後、にしてください」
「気が合えばな」
とびきりの笑顔を見せる瀬勝に、鈍井もいい気分になった。
卒業式
良子は、涙を流していた。則平は、やれやれと思いながら、宥める。
「ノリくんと、離れ離れになっちゃうなんて!」
「一月に告白してきた、良子が悪い」
「ノリくん、頭悪いから留年すると思って…」
「いつもはお仕置きだが、めでたい日だから、特別に勘弁してやろう」
最後ならば、と良子は頬を赤く染めた。何が始まるのだろうか。
「ノリくん…」
手のひらを見せる良子。相変わらず、生命線が長いな、と則平は思った。
「こうか?」
手のひらを重ねる則平。何がしたいのだろうか。
「いや、お手!じゃなくて…欲しいんです」
「金なら、やらんぞ!!」
「そうじゃなくて、第二ボタン!!」
「ミサイルのか!?」
「制服のです!!」
「そんなもん、いくらでもくれてやるわ!」
制服のボタンを、すべて引きちぎろうとする則平。
「第二ボタンだけで、いいんです!」
(こんなものが欲しいとは、乙女心は分からん。)
ボタンを引きちぎり、良子に渡す則平。まるで宝物のように、ボタンを眺める良子が、とても嬉しそうで、いい気持ちだった。そして、ボソっと呟く。
「俺は、卒業するが…俺からは、まだ卒業しないでくれよ」
「ワッツ?」
キョトンっとする良子に、いつもは逆だろ、と則平は言い直した。
「まだ俺の彼女で居て欲しいと、そう言っておるのだ!」
則平は、良子を抱きしめた。高まる鼓動を感じ、こっちも照れてしまう。
「こうせねば、分からぬか…」
「もう、不器用なんだから」
この二人が、その後どうなったかは、語るまでもない。
END
あとがき
いかがだったでしょうか。登場人物を絞り、一話完結にし、分かりやすい内容になっていたと思います。則平君のイメージは、「遊戯王 5Ds」に登場するジャック・アトラスがモデルです。彼のポンコツだけど、かっこいい時は最高にかっこいい、良さを感じられたら、成功です。プライドは高いけど、人に寄り添える良い漢です。
私が通っていた高校も、学ランでしたが、第二ボタンのやり取りは、見かけませんでしたね。私は、ボタンをあげることも、貰うこともありませんでした。退屈な、高校生活送ってましたから。まぁでも、おかげで夢いっぱいな、青春を描くことが出来ます。
次回、更新をお楽しみに。いつも、応援ありがとうございます。