あらすじ
祖母の元へと向かう亮、弟と和解する獅子川、両親との思い出に浸る美由紀。それぞれの旅は、終わりを告げようとしていた。
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冬樹は亮の祖母と思われる人物が住んでいるところまで、案内してくれると車を用意してくれた。悪いと思った獅子川は、車の運転を申し出た。美由紀は、同行せず一人、リゾートに残ることにした。
住宅地へと向かい、鯨本家に着いた。胸を高鳴らせ亮は、チャイムを鳴らし反応を待った。…残念ながら、祖母は亡くなっていた。だが、まだ出来ることはあると、家の人達に祖母の話を聞くことにした。
亮と別れた獅子川は、冬樹宅へと向かった。立派な畑が広がっている。
「兄さんが良ければなんだけど、畑仕事を手伝ってくれないか。腰を痛めてしまって…兄さんと一緒に生活できるだけの、余裕はあるからさ」
「…お前、俺のこと許してくれるのか」
許すも何も、と冬樹は両親が残した言葉を告げた。二人は兄を恨むなと言ったそうだ。
「確かに兄さんを憎んだこともあった、でも幼い頃僕を守ってくれた、優しい兄さんのことを思い出したんだ。それに一番迷惑をかけられた、両親が許しているのに、僕だけ恨めないよ」
それから、マロ芋畑を眺めながら二人で他愛のない話をした。獅子川の気持ちは、決まった。
一人残った美由紀は、神社に向かっていた。祖父母が出会ったという縁結びの神社【神照神社】に心惹かれたのだ。参拝した後、結ばれたカップル達がサインをした柱の列を見つけた。
(…えっと、木之元、木之元…あった!!ってこの名前って…私の両親!?)
その柱には、両親の名前と美由紀の名前が書かれていた。和尚さんに話を聞くと二人のことを覚えていた。二人は幼い私を連れて、何度もここへ来ていたそうだ。
「【姿なき母】が公開された後も、すぐここに来てね、映画のチケットをくれたんですよ」
自分は両親に愛されていたのだと、感じられた。大丈夫、私はまた立てる。
続く…